従業員エンゲージメントとは
「エンゲージメント」は、従業員が仕事や組織に対して持つ熱意や思い入れの度合いを表す概念です。
エンゲージメントは、従業員満足度やロイヤリティとは異なり、従業員がどれだけ積極的に仕事や組織に関わろうとしているかを測る指標です。
従業員エンゲージメントの定義
従業員エンゲージメントは主に、
1.企業理念・ビジョンへの共感:従業員が企業の掲げる理念やビジョンを深く理解し、それに共感していること。
2.自発的な貢献意欲:従業員が自ら進んで企業の成功に貢献しようとする強い意志を持っていること。
3.相互成長の関係性:企業と従業員が互いに成長し合える、Win-Winの関係を築いていること。
の3つの要素から構成されています。
エンゲージメントが低いとどうなる?
従業員エンゲージメントの低下は、企業にとって看過できない重大な問題です。エンゲージメントが低い状態が続くと、組織全体に波及する様々な悪影響が生じます。ここでは、エンゲージメント低下がもたらす6つの主要な問題について詳しく解説します。
1.生産性の著しい低下
エンゲージメントが低い従業員は、仕事に対する意欲や熱意が欠如しがちです。これにより、
- 業務効率の悪化:モチベーション不足により、タスクの完了に時間がかかり、全体的な生産性が低下します。
- 創造性の枯渇:新しいアイデアや革新的な解決策を生み出す意欲が失われ、企業の競争力が低下します。
- 品質管理の不徹底:仕事への関心が薄れることで、製品やサービスの品質が低下し、顧客満足度に悪影響を及ぼします。
のような問題が発生します。
2.従業員モチベーションの急激な低下
低いエンゲージメントは、従業員のモチベーション低下を引き起こします。
仕事へのやりがい喪失:業務が単なる義務と化し、無気力な状態で仕事に臨むようになります。
職場雰囲気の悪化:ネガティブな発言や態度が増加し、職場全体の雰囲気が悪化します。
企業理念との乖離:組織の目標や方向性への共感が薄れ、個人と企業の価値観のミスマッチが生じます。
離職率の急上昇
エンゲージメントの低い従業員は、転職を真剣に考えるようになります。
- 心理的つながりの希薄化:「この会社で長く働きたい」という気持ちが薄れ、転職市場に目を向けるようになります。
- 条件以外の要因による転職:給与や福利厚生がよくても、より大きなやりがいを求めて転職を選択します。
- 優秀な人材の流出:特に高いスキルや潜在能力を持つ従業員ほど、離職のリスクが高まります。
4.組織内コミュニケーションの崩壊
低エンゲージメントは、職場のコミュニケーションにも深刻な悪影響を及ぼします。
- 上下・水平関係の断絶:上司や同僚との意思疎通が不十分になり、情報共有が滞ります。
- 部署間連携の低下:部門を超えた協力が難しくなり、組織全体の業務効率が低下します。
- 問題解決能力の低下:コミュニケーション不足により、問題の早期発見・解決が困難になります。
5.企業業績の悪化
これらの要因が複合的に作用することで、最終的に企業の業績にも深刻な影響を及ぼします。
- 収益性の低下:生産性の低下と品質の劣化により、企業の収益力が著しく低下します。
- 競争力の喪失:優秀な人材の流出と創造性の欠如により、市場での競争力が失われます。
- 市場シェアの縮小:顧客満足度の低下に伴い、売り上げや市場シェアが減少します。
エンゲージメントに力を入れ、成功した企業の具体例
スターバックス
スターバックスは、従業員エンゲージメントが業績に大きな影響を与えることを痛感したことをきっかけに、独自の取り組みを開始しました。この取り組みは、企業理念に共感したパートナーとのエンゲージメントを通じて提供価値を高め、競争優位性を圧倒的なものにしたいという考えや、アメリカの学費高騰や就職難の問題に対応する必要性も背景にありました。
スターバックスの取り組みは大きな成果を上げ、エンゲージメントが継続して高い状況を維持しています。従業員の会社に対する忠誠心やロイヤリティが向上し、ESGブランド調査では「社会」の項目で1位を獲得しました。特に「パーパスの明確さと従業員の働き方」において消費者から高い評価を得ており、「非正規労働者やマイノリティに対する差別が職場にない」という評価も得ています。
Amazon
Amazonは、かつてワークライフバランスの点で低評価が集まっていたことを背景に、従業員エンゲージメント向上への取り組みを開始しました。同社の顧客中心のイノベーションを重視する企業文化と、データ駆動型の組織構築の必要性も、この取り組みを後押ししました。
その結果、Amazonの従業員エンゲージメントは大幅に向上し、GAFAの一つとして従業員エンゲージメントの高さで知られるようになりました。この取り組みは、トラフィックの増加をもたらし、世界中の何百万ものAmazonの顧客にリーチできるようになりました。さらに、規模の拡大とコスト削減の構造を実現し、顧客により低価格で商品を提供できるようになりました。
出典:https://sustainability.aboutamazon.com/employees
LIXIL
LIXILは、人口減少に伴う新築着工減少が予測される中、新築からリフォーム需要への戦略的シフトを背景に、従業員エンゲージメント向上の取り組みを開始しました。エンドユーザーとの接点を持つ社員のエンゲージメントが顧客ロイヤリティに直結すると考え、従来の年1回の従業員満足度調査では捉えきれなかったタイムリーな社員の現状把握を目指しました。
その結果、月1回のエンゲージメントサーベイの実施により、従業員の声をリアルタイムに反映した職場環境の改善が可能になりました。客観的な数値として社員の現状を明確化し、ニーズに合った施策の提案ができるようになったことで、貢献意欲が高まり、エンゲージメントスコアが10ポイント上昇しました。
LIXILは、トップダウンとボトムアップの両面から仕組みづくりや職場環境の改善を継続的に進めています。特に、ショールームコーディネーターのエンゲージメントと顧客体験をリンクさせる取り組みに注力し、ROI(投資利益率)を意識した施策により、エンゲージメント向上の経営価値を証明しています。
出典:https://www.lixil.com/en/stories/stories_37/
オムロン
オムロンは、新たな長期ビジョン「Shaping the Future 2030」と中期経営計画「SF 1st Stage」の実現に向けて、従業員エンゲージメントの向上を重要課題と位置付け、2016年からグローバル全社員を対象としたエンゲージメントサーベイ「VOICE」を開始しました。この取り組みは、社員一人ひとりが個々の情熱と能力を最大限に発揮し、企業理念の実践に邁進できる環境づくりを目指すものです。
2022年度の調査では、グローバル20,603名を対象に実施し、91%という高い回答率を達成しました。また、38,503件のフリーコメントが集まり、経営チームと各職場がこれらの生の声をもとに、業務効率性やパフォーマンスマネジメントなどの課題解決に向けた取り組みを行っています。
結果として、グローバルで570件の改善施策が立案され、主体的に実行されています。この高い参加率と改善施策の数から、「VOICE」がオムロンに根付き、自走する取り組みになってきたことが分かります。オムロンは今後も「VOICE」を継続し、「社員一人ひとりが活き活きと働ける会社づくり」を加速させていく方針です。
出典:https://www.omron.com/global/en/edge-link/news/553.html
ツールの活用
従業員エンゲージメントの収集・活用はツールの活用が不可欠です。
Tasonalは、タスク管理機能や1on1管理機能、目標管理機能から人材データ(スキル・エンゲージメント・志向性など)を収集/可視化し、それらのデータを基にした人材管理や業務の改善を支援します。
エンゲージメントをはじめとした人材データの収集や更新には、現場の協力が不可欠です。従業員エンゲージメントを活用した施策が形骸化しないためにも、現場負荷を下げるようなツールを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
エンゲージメントとは、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことを指し、一言で表すなら、「従業員の企業に対する信頼の度合い」や「従業員と企業のつながりの強さ」と言えます。
現代ではエンゲージメントは、組織の成功にとって不可欠な要素になりつつあります。
また、エンゲージメントのデータ取集や活用にはTasonalのようなツールを導入しましょう。業務管理ツールからデータ収集することで、少ない現場負荷でエンゲージメントを活用した人事戦略の立案や施策の実行を可能にします。
ぜひお気軽にお問合せください。
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