誰に届けるかをAIで定義する——アプローチ設計 No.1「ターゲット設計」

はじめに:スカウトの成否は「送る前」に決まっている
前回の記事では、AI時代の採用競争はオペレーションの効率化から「アプローチ設計」の質の競争にシフトすることを述べました。
アプローチ設計には4つの要素があります:
- ターゲット設計:誰に届けるか ← 今回
- メッセージ設計:何を届けるか
- チャネル設計:どこで届けるか
- タイミング設計:いつ届けるか
今回はその第1回、ターゲット設計です。
スカウトの返信率が低い。よく聞く悩みです。多くの企業はメッセージの文面を改善しようとします。件名を工夫する。冒頭の一文を変える。しかし、根本的な問題はそこではないことが多い。
そもそも、アプローチすべきでない人にアプローチしている。
ターゲット設計は、アプローチ全体のROIを決める最上流の意思決定です。ここがズレていれば、どんなに優れたメッセージも、どんなに最適なタイミングも、効果を発揮しません。
そして、ターゲット設計の核心は実はシンプルです。「自社が欲しい人材」と「自社に来てくれる人材」の重なりを見つけること。この記事では、この2軸のフレームワークでターゲット設計を再定義します。
ターゲット設計の本質:2つの問いから始める
「誰が欲しいか」と「誰なら来てくれるか」
ターゲット設計で問うべきことは、突き詰めると2つしかありません。
- 自社が欲しい人材は誰か(Desire軸)
- 自社に入りたいと思ってくれる人材は誰か(Attraction軸)
この2軸を掛け合わせると、候補者は4つの象限に分類されます。
| 入りたい:高い | 入りたい:低い | |
|---|---|---|
| 欲しい:高い | A 最優先ターゲット | B 口説くターゲット |
| 欲しい:低い | C 見送る(今は) | D 対象外 |
| 象限 | 戦略 |
|---|---|
| A | 最優先でアプローチ。スピードが命 |
| B | 魅力を伝えるアプローチ設計が必要 |
| C | 今は見送り。将来のポジション変化で再検討 |
| D | アプローチ対象外 |
多くの企業のスカウトが成果を出せない理由は、この象限の区別なく一律にアプローチしていることにあります。B象限の候補者にA象限と同じメッセージを送っても響かない。C象限にリソースを割いてもROIは低い。
なぜこの分類が重要なのか
従来のターゲティングは「自社が欲しい人材は誰か」(Desire軸)だけで設計されていました。スキル、経験年数、年収レンジ——すべて「欲しい人材の条件」です。
しかし、「欲しい」だけではスカウトは成功しません。相手が自社に興味を持つ可能性があるかどうか——Attraction軸——が欠落していると、条件は完璧なのに返信が来ない、という状態が続きます。
逆に、Attraction軸だけを見て「来てくれそうな人」にアプローチすると、入社後のミスマッチが起きます。
ターゲット設計とは、この2軸の交差点を見つけ出す作業です。そして、この交差点を正確に見つけることこそ、AIが最も力を発揮する領域です。
Desire軸:「自社が欲しい人材」をAIで定義する
従来の「条件マッチング」の限界
現在のスカウトにおけるターゲティングは、ほとんどが表層的な条件マッチングです。
- 職種:バックエンドエンジニア
- 経験年数:3年以上
- スキル:Go, AWS
- 年収レンジ:500〜700万円
この方法には3つの問題があります。
問題1:条件が同じでも、人は全く違う
「バックエンドエンジニア・Go経験3年」に該当する候補者が100人いたとして、その100人は全く異なる人材です。スタートアップで裁量を求める人、大企業で安定を求める人、チームワーク重視の人——同じ条件でも、自社との相性は全く異なります。
問題2:「自社で活躍する人」が定義されていない
最も根本的な問題。「どんな人がうちで活躍するか」を明確に定義できていません。「技術力が高い人」——これは定義ではありません。技術力が高くてもチームに馴染めなければ活躍できない。
問題3:条件の優先度が整理されていない
すべてが「必須」になっている。結果として、ターゲットが極端に狭くなるか、条件を緩めすぎて精度が落ちるか、どちらかに振れがちです。
AIで構造化する:評価項目の階層設計
「自社が欲しい人材」を定義する第一歩は、評価項目を「評価シート」のように階層構造で整理することです。
フラットな条件リストではなく、大項目(評価カテゴリ)と小項目(具体的な評価観点)の2層構造にし、それぞれに重み付けを設定します。
評価項目の階層構造(例:バックエンドエンジニア)
■ 技術スキル ─────────── 40%
├ Go / TypeScript 50点
├ マイクロサービス 30点
└ インフラ(AWS/GCP) 20点
■ カルチャーフィット ──── 30%
├ チームワーク志向 40点
├ 自律性 35点
└ コミュニケーション 25点
■ 志向性 ─────────────── 30%
├ 成長意欲 40点
├ 技術への探究心 35点
└ 事業関心 25点
─────────────────────────────
共通NG(減点項目)
✕ 直近1年以内に転職3回以上
✕ 経歴に重大な虚偽が疑われる
この構造化が「条件リスト」と決定的に違うのは、観点ごとの重要度が明示されることです。
「Go経験」がフラットな必須条件に入っていると、Go未経験の優秀な候補者は全員除外されます。しかし階層構造で「技術スキル40%の中の50点」と位置付ければ、Go未経験でも他の技術観点(マイクロサービス経験、インフラ知識)が高ければ、技術スキル全体としてはスコアが出る。1つの条件に該当しないだけで候補者を丸ごと失う、ということがなくなります。
さらに重要なのは、「カルチャーフィット」「志向性」のような定性的な観点にも重みを与えられること。従来の条件マッチングでは表現できなかった**「人としての相性」まで構造化してスコアリングに組み込める**のです。
**共通NG(減点項目)**は、どの評価カテゴリにも横断的に適用される除外基準です。これに該当すると、他の評価がどんなに高くても候補者から除外されます。職種を問わず共通するリスク要因をここに設定します。
職種ごとに評価項目テンプレートを持つこともできます。エンジニアと営業では見るべき観点が全く違うので、職種別に最適な階層構造を用意しておく。新しいポジションが開いた時に、テンプレートをベースにカスタマイズすれば、ゼロから設計する手間を省けます。
評価項目を階層化し、重み付けするだけで、Desire軸の精度は大きく改善されます。
活躍人材からの逆算
構造化のさらに先にあるのが、「自社で実際に活躍している人材の特徴」からターゲットを逆算するアプローチです。
入社後のパフォーマンスデータが蓄積されると、AIが共通パターンを抽出できるようになります。
例えば:
- 技術スキルのスコアは「上位」ではなく「中の上」が多い
- 代わりに「カルチャーフィット」カテゴリのスコアが突出している
- 「志向性」の中でも特に「事業関心」の配点が高い人の活躍率が高い
こうした発見は人間の直感に反することも少なくありません。「技術力が最も重要」と信じて技術スキルに40%の重みを置いていたが、実は「カルチャーフィット」の重みを50%にした方が活躍予測の精度が上がる——というケースは珍しくない。
これにより、評価項目の重み付けや配点自体がデータで進化していきます。
Attraction軸:「自社に入りたい人材」をAIで見極める
Desire軸が「企業側の目線」なら、Attraction軸は**「候補者側の目線」**です。この軸は従来のターゲティングでほとんど無視されてきました。しかし、スカウトの成否を分けるのはむしろこちらです。
転職意欲——すべての象限に影響する共通軸
2軸フレームワークの議論に入る前に、すべての象限に横断的に影響する重要な変数があります。転職意欲です。
どんなに自社が欲しく、どんなに自社に興味がある候補者でも、転職する気がなければアプローチは成立しません。逆に、転職意欲が高い候補者は象限を問わずアクションにつながりやすい。
転職意欲の高低は、A〜Dすべての象限のアプローチ優先度に影響する
転職意欲 高 → アプローチのタイミングは「今」
転職意欲 中 → 情報提供から入り、関係構築
転職意欲 低 → 長期的なナーチャリング対象
AIは転職意欲のシグナルを職務経歴書やプロフィールの行間から検出できます。
- 在籍期間のパターン:「2〜3年ごとに転職している人が、現職で3年を超えた」→ そろそろ動く可能性
- ポジションの停滞:「同じ会社で4年、役職変更なし」→ 成長機会を求めている可能性
- 業界の状況:「所属企業がレイオフを発表した」→ 転職を検討し始めるタイミング
- プロフィール更新頻度:最近になって経歴を更新している → 転職活動の準備段階
転職意欲は2軸の「前提条件」として機能します。A象限かつ転職意欲が高い候補者が、最もアプローチすべきターゲットです。
「自社に入りたい」をどう推測するか
候補者が自社に興味を持つかどうかは、直接聞かなければ分からない——そう思われがちですが、いくつかのシグナルから推測が可能です。
キャリア志向との整合
- スタートアップ志向:過去にスタートアップ→スタートアップと転職している人は、また小さな組織を選ぶ可能性が高い
- 成長環境を求める傾向:「より大きなチャレンジ」を理由に転職している人は、成長フェーズの企業を好む
- 安定志向:大企業に長く在籍し、組織の中でキャリアを積んでいる人は、同様の環境を求める傾向
働き方・カルチャーとの親和性
- リモートワーク志向:フルリモートで働いた経験がある → リモート可能な企業を好む可能性
- 技術スタックの一致:自社と同じ技術スタックを深めている → 技術的な魅力を感じやすい
- 類似企業での経験:自社と近いフェーズ・規模の企業で働いた経験 → 環境適応がスムーズ
候補者側のシグナル
- 過去に自社にエントリーした履歴:最も直接的な「興味あり」シグナル
- 自社の技術ブログを読んでいる(分析可能な場合)
- 自社社員と共通のコミュニティに属している
AIはこれらのシグナルを候補者ごとに集約し、「この候補者が自社に興味を持つ確率」をスコアリングできます。これがAttraction軸のAIによる推定です。
4象限ごとのアプローチ戦略
2軸が定義できたら、いよいよ象限ごとの戦略です。ここが最大のポイント——同じスカウトでも、象限によって戦略は全く異なります。
A象限:最優先ターゲット(欲しい × 来てくれそう)
自社が欲しく、かつ自社に興味を持つ可能性が高い候補者。
この象限の候補者は、競合他社も同時にアプローチしている可能性が極めて高い。だからこそ、スピードが命です。
戦略:即座に、パーソナライズされたアプローチ
- 候補者の経歴に基づいた具体的なメッセージを送る
- 「なぜあなたに声をかけたのか」を明確に伝える
- カジュアル面談の設定までのリードタイムを最短にする
- 採用決裁者が直接アプローチすることで本気度を伝える
AIの役割:A象限の候補者が市場に出現した瞬間を検知し、即座にアラートを出す。パーソナライズされたメッセージのドラフトを自動生成する。
この象限は「数」ではなく「速さと質」で勝負する。
B象限:口説くターゲット(欲しい × 来てくれにくい)
自社が欲しいが、候補者が自社に興味を持っていない(まだ知らない)。
多くの企業が最もリソースを割くべきなのに、最も苦戦するのがこの象限です。条件マッチングでは候補者として挙がってくるが、スカウトしても反応がない——その多くがB象限です。
戦略:自社の魅力を候補者の文脈に合わせて翻訳する
- 候補者が求めていること(成長、技術チャレンジ、安定、ワークライフバランスなど)を推測する
- その文脈に自社の魅力を接続するメッセージを設計する
- 一度のアプローチで決めようとしない。複数タッチポイントでの関係構築を前提にする
- 自社の技術ブログ、イベント登壇、社員インタビューなどのコンテンツを活用する
AIの役割:候補者のキャリア文脈を読み解き、「この候補者にとって自社のどの魅力が刺さるか」を推定する。アプローチのメッセージを候補者ごとにカスタマイズする。
この象限は「メッセージ設計」が成否を分ける。(→ 次回のNo.2で詳しく解説します)
C象限:見送りターゲット(欲しくない × 来てくれそう)
候補者は自社に興味があるが、現時点では採用基準を満たしていない。
応募で来るケースが多い象限です。求人に応募してくれたが、スキルや経験が足りない。しかし、この象限を無視するのは機会損失です。
戦略:将来の可能性を残す
- 現時点では見送りだが、丁寧な候補者体験を提供する
- 成長後に再アプローチできるよう、タレントプールに登録する
- ジュニアポジションや別ポジションが開いた時に声をかける
- 自社コミュニティへの招待など、ゆるやかな接点を維持する
AIの役割:C象限の候補者のスキル成長をモニタリングし、A象限に移動したタイミングで通知する。「この候補者は半年前はC象限でしたが、直近でリーダー経験を積み、A象限の基準を満たしました」というアラート。
この象限は「今」ではなく「未来」を見る。
D象限:対象外(欲しくない × 来てくれにくい)
自社が求める条件を満たさず、候補者も自社に興味がない。
ここにリソースを割く必要はありません。ただし、定期的にD象限の定義を見直すことは重要です。市場環境の変化や自社の事業変化によって、昨日のD象限が明日のA象限になることもあります。
部分集合から始める:アプローチの優先順位
「完璧なターゲット」は存在しない
4象限のフレームワークを理解した上で、もう一つ重要な考え方があります。
「自社が欲しい人材」の集合と「自社に入りたい人材」の集合の重なり(部分集合)から攻める、という優先順位の考え方です。
| 集合 | 説明 |
|---|---|
| 自社が欲しい人材 | Desire軸で定義した条件を満たす候補者群 |
| 自社に入りたい人材 | Attraction軸で推定した「自社に興味がありそう」な候補者群 |
| ★ 重なり=A象限 | 両方の集合に含まれる候補者。ここから最優先で攻める |
理想は「欲しい人が全員来てくれること」ですが、現実にはそうなりません。だから、まずは2つの集合が重なる部分——A象限——に集中するのが合理的です。
重なりの大きさを広げる
A象限の候補者数には限りがあります。そこで次のステップは、重なりを広げること。
- B象限をA象限に移す:自社の魅力を正しく伝えて、興味を持ってもらう(→ メッセージ設計・採用ブランディング)
- Desire軸を見直す:「本当に欲しい人材」の定義を精緻化し、見落としていた層を発見する(→ 活躍人材データの活用)
- C象限の候補者の成長を待つ:タレントプールでナーチャリングし、基準を満たしたタイミングで再アプローチ
この「重なりを広げる」プロセスこそ、ターゲット設計の継続的改善です。そしてAIは、それぞれの施策の効果をデータで検証し、次の一手を提案できます。
転職意欲を重ねた3次元の優先順位
実務上のアプローチ優先順位は、2軸フレームワークに転職意欲を掛け合わせた3次元で決まります。
| 優先度 | 条件 | アクション |
|---|---|---|
| 1 | A象限 × 転職意欲 高 | 即アプローチ。48時間以内にコンタクト |
| 2 | A象限 × 転職意欲 中 | 早期にアプローチ。情報提供と面談提案を同時に |
| 3 | B象限 × 転職意欲 高 | 魅力訴求型のアプローチ。候補者の関心に刺さるメッセージで |
| 4 | A象限 × 転職意欲 低 | 長期リレーション構築。イベント招待や情報発信から |
| 5 | B象限 × 転職意欲 中 | 関係構築フェーズ。自社コンテンツで接点を作る |
| 6 | C象限(全般) | タレントプールで将来に備える |
AIはこの優先順位を候補者一人ひとりに対して自動算出し、「今日、誰に、どんなアプローチをすべきか」を毎日リコメンドします。人間の採用担当者は、このリストの上から順に判断していけばいい。
実践:2軸フレームワークでターゲット設計を始める
Step 1:Desire軸の構造化
まず「自社が欲しい人材」を定義します。
ポイントは、現場の採用決裁者と一緒にやること。採用担当者だけで決めると、現場の実態と乖離した条件になりがちです。
- 評価項目を大項目(カテゴリ)と小項目(具体的な観点)の階層構造で整理する
- 大項目ごとに重み(%)を設定する。「何をどれだけ重視するか」が明示される
- 小項目ごとに配点を設定する。各カテゴリ内での優先順位が明確になる
- 共通NG(減点項目)を設定する。職種を問わず適用される除外基準
- 職種別にテンプレートを用意する。エンジニアと営業では見る観点が違う
- 活躍している社員のデータがあれば、逆算で重み付けや配点を検証する
Step 2:Attraction軸の推定ロジックを設計する
次に「自社に来てくれそうな人材」の推定基準を整理します。
- 自社と類似の環境(企業規模・フェーズ・カルチャー)での経験があるか
- 候補者のキャリア志向と自社のポジションが整合しているか
- 技術スタックやドメインに親和性があるか
- 過去に自社への接点(応募・イベント参加・ブログ閲覧等)があるか
この推定は最初から完璧にはなりません。仮説として設定し、実際のアプローチ結果(返信率・面談設定率)で検証・改善していきます。
Step 3:4象限に候補者をマッピングする
Desire軸とAttraction軸の基準が設定できたら、AIで候補者を4象限にマッピングします。
- 各象限に何人の候補者がいるか
- A象限の候補者数はアプローチ目標に対して十分か
- 転職意欲のスコア分布はどうか
ここで、A象限が極端に少ない場合は、Desire軸の条件が厳しすぎるか、Attraction軸の推定が悲観的すぎる可能性があります。条件を見直してリバランスします。
Step 4:象限別のアプローチ実行
4象限の戦略に基づいてアプローチを実行します。
- A象限:パーソナライズメッセージで即アプローチ
- B象限:魅力訴求型メッセージで段階的にアプローチ
- C象限:タレントプールに登録し、定期的にモニタリング
- D象限:対象外として除外
Step 5:データで2軸を継続改善する
2〜4週間の運用データが溜まったら、2軸の精度を見直します。
Desire軸の改善
- 面接通過率が高い候補者の共通特徴は何か → 評価カテゴリの重み付け見直し
- 入社後に活躍している人材の傾向 → 小項目の配点調整・新しい評価観点の追加
- 共通NGに追加すべきパターンの発見
Attraction軸の改善
- 返信率が高かった候補者に共通するシグナルは何か → 推定ロジックの精緻化
- 「意外に反応があった層」の発見 → ターゲットの拡張
転職意欲の推定改善
- 実際にアプローチした結果と転職意欲の推定スコアの相関を検証
- 有効なシグナルとノイズを選別
AIが運用データを基に条件の見直しを自動提案し、人間がビジネスコンテキストを踏まえて判断する。このサイクルが回り続けることで、2つの集合の重なりは時間とともに広がっていきます。
よくある失敗パターン
失敗1:Desire軸だけでターゲティングする
最も多い失敗。スキル・経験年数・年収レンジなどの「欲しい人材の条件」だけで候補者を絞り込み、Attraction軸を無視してスカウトを送る。
結果:条件は完璧なのに返信が来ない。「うちのスカウトは返信率が低い」と嘆くが、原因は明確。
対策:すべてのターゲット候補者に対して「この人は自社に来てくれそうか」を問う。 AIにAttraction軸のスコアを出させ、Desire×Attractionの2軸で優先順位をつける。
失敗2:Attraction軸を「転職意欲」と混同する
「転職意欲が高い人=来てくれそうな人」と考えるのは誤りです。転職意欲が高くても、自社に興味がなければ来ません。逆に、転職意欲がまだ低くても、自社への潜在的な興味が高い人はアプローチすべきです。
転職意欲はAttraction軸とは独立した変数。両方を見る必要があります。
失敗3:象限を固定して考える
候補者は一度分類したら永久にその象限にいるわけではありません。
- スキルが伸びてC→Aに移動する
- 自社の認知度が上がってB→Aに移動する
- 市場環境の変化でD→Bに移動する
対策:AIで定期的に象限の再評価を行う。 特にB→AとC→Aの移動は、タイミングよくキャッチすれば大きな成果につながります。
失敗4:A象限にしかアプローチしない
A象限は最優先ですが、数に限りがあります。A象限だけに依存すると、採用目標を達成できません。
対策:A象限で即効性のある成果を出しつつ、B象限へのアプローチで「重なり」を広げる。 中長期的にはB象限からA象限への転換率を高めることが、採用力の底上げにつながります。
まとめ:ターゲット設計は「2つの集合の重なり」を見つけること
ターゲット設計の本質は、「自社が欲しい人材」と「自社に入りたい人材」の重なりを見つけ、広げることです。
| 要素 | 内容 | AIの役割 |
|---|---|---|
| Desire軸 | 評価項目の階層構造化(大項目×重み付け+小項目×配点+共通NG)+ 活躍人材からの逆算 | 重み付け最適化・見落としの発見 |
| Attraction軸 | キャリア志向・カルチャー親和性・過去の接点 | シグナル検出・確率スコアリング |
| 転職意欲 | 在籍期間・役職停滞・業界動向・行動シグナル | タイミング検知・優先度調整 |
| 4象限戦略 | A:即アプローチ B:魅力訴求 C:将来に備え D:除外 | 象限分類・戦略提案・再評価 |
従来のターゲティングはDesire軸だけの一次元でした。Attraction軸と転職意欲を加えることで、ターゲット設計は三次元になります。そしてこの三次元のスコアリングと優先順位付けは、AIが最も得意とする領域です。
まずは2つの集合の重なりから攻める。そして、データで重なりを広げ続ける。
アプローチ設計シリーズの次回は、**No.2「メッセージ設計——何を届けるか」**を解説します。ターゲットの象限が分かったとき、特にB象限の候補者の心を動かすメッセージをどう設計するか。AIによる「パーソナライズ風」と本当のパーソナライズの違いを掘り下げます。
Tasonalの AIスカウト機能は、このDesire×Attractionの2軸設計を実装しています。評価項目を大項目/小項目で構造化し、重み付け+共通NG(減点)まで設定可能。候補者の優先順位付け、そして採用担当者のフィードバック学習による継続改善。ターゲット設計の「設計」に集中できる環境を、AIが支えます。
