何を届けるかをAIでデザインする——アプローチ設計 No.2「メッセージ設計」

はじめに:ターゲットが決まった。次は「何を伝えるか」
前回の記事では、「自社が欲しい人材」×「自社に入りたい人材」の2軸フレームワークでターゲットを4象限に分類しました。
| 入りたい:高い | 入りたい:低い | |
|---|---|---|
| 欲しい:高い | A 最優先 | B 口説く |
| 欲しい:低い | C 見送り | D 対象外 |
「誰にアプローチするか」は決まった。しかし、ターゲットが正しくても、メッセージが間違っていれば返信は来ません。
アプローチ設計の4要素のうち、今回は第2回:
- ターゲット設計:誰に届けるか ✓
- メッセージ設計:何を届けるか ← 今回
- チャネル設計:どこで届けるか
- タイミング設計:いつ届けるか
スカウトの返信率を改善しようとして、多くの企業が最初にやるのは「文面の改善」です。件名を変える。冒頭の一文を工夫する。しかし、それは枝葉の話です。
メッセージ設計の本質は、「自社の何を、候補者のどの文脈に接続するか」を構造的に設計することです。そして、この設計をAIで自動化するには、2つの準備が必要です。
- 自社の強みの棚卸し——届けるべき素材を揃える
- 候補者ペルソナとの接続設計——素材をどう届けるかを決める
この記事では、この2つのステップを中心に、AIによるメッセージ設計の全体像を解説します。
なぜ「いいスカウト文」を書いても返信が来ないのか
「パーソナライズ風」の限界
AIスカウトツールの普及で、候補者の名前や経歴に言及したスカウトメッセージが増えました。一見パーソナライズされているように見えます。
「山田様のGoでのマイクロサービス開発のご経験を拝見しました。弊社でもGoを主力技術として採用しており、ぜひお話しさせていただきたく……」
このメッセージの問題は何か。候補者の経歴に触れているだけで、「なぜ自社なのか」が語れていないことです。
候補者の立場で考えてみてください。Goを使っている会社は無数にあります。「Goを使っています」だけでは、自社を選ぶ理由にならない。候補者が知りたいのは、**「この会社に行くと、自分のキャリアにとって何が変わるのか」**です。
パーソナライズの3つのレベル
スカウトメッセージのパーソナライズには、実は3つのレベルがあります。
| レベル | やっていること | 例 | 効果 |
|---|---|---|---|
| Lv.1 | 名前・経歴への言及 | 「山田様のGo経験を拝見しました」 | 低 |
| Lv.2 | 候補者スキル × 自社ポジションの接続 | 「Go×マイクロサービス経験が、弊社の決済基盤リアーキテクチャで活きます」 | 中 |
| Lv.3 | 候補者のキャリア文脈 × 自社の独自価値 | 「スタートアップでの0→1経験をお持ちの山田様なら、弊社の新規事業フェーズで技術選定からリードいただけます。裁量の大きさは前職以上です」 | 高 |
多くのAIスカウトツールが実現しているのはLv.1、よくてLv.2です。Lv.3に到達するには、「自社の独自価値」が言語化・構造化されている必要があります。
そして、Lv.3こそが候補者の心を動かすメッセージ——特にB象限(欲しいが自社に興味がない候補者)を振り向かせるために不可欠なレベルです。
ステップ1:自社の強みの棚卸し
Lv.3のパーソナライズを実現するために、まず必要なのは**「自社の強みの棚卸し」**です。AIにメッセージを作らせる前に、そもそも「届けるべき素材」が揃っていなければ、AIは一般的な文面しか生成できません。
なぜ棚卸しが必要なのか
ほとんどの企業は、自社の強みを**「なんとなく」しか把握していません。**
- 「うちは技術力が高い」→ 具体的にどの領域で?競合と比べてどう違う?
- 「風通しがいい」→ それは何によって実現されている?候補者にとっての具体的なメリットは?
- 「成長フェーズ」→ どんなポジションが生まれている?候補者のキャリアにどう影響する?
抽象的な強みのままでは、AIは「どの会社にも当てはまるスカウト文」しか作れません。強みを具体的に、候補者の文脈で語れる粒度まで分解することが、メッセージ設計の出発点です。
強みの4カテゴリ
自社の強みを棚卸しする際、4つのカテゴリに整理すると漏れが出にくくなります。
| カテゴリ | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 事業・プロダクト | 何を作っているか。市場でのポジションは | 「金融×SaaSで国内トップシェア」「シリーズBで30億円調達」 |
| 技術・環境 | どう作っているか。技術的なチャレンジは | 「Goでのマイクロサービス」「100万RPSを捌くインフラ」 |
| チーム・カルチャー | 誰と働くか。どんな働き方か | 「元Google出身CTOの直下」「フルリモート・フレックス」 |
| キャリア・成長 | この会社で何が得られるか | 「技術選定から携われる」「半年でチームリーダー」 |
「他社にない強み」を見つける
棚卸しのポイントは、「他社にも言えること」と「自社にしか言えないこと」を区別することです。
- 他社にも言える:「リモートワーク可」「モダンな技術スタック」「成長環境」
- 自社にしか言えない:「金融ドメインの決済基盤をGoでフルスクラッチ開発」「元メルカリ出身のSREチームが構築したインフラ」「創業3年で黒字化、IPO準備中」
他社にも言える強みは、メッセージの「固定部分」に入れる。自社にしか言えない強みは、候補者ごとの「可変部分」で使う。 この使い分けが、後述するメッセージ構造設計につながります。
強みの棚卸しはAIだけではできない
重要な注意点として、強みの棚卸しはAIに丸投げできるフェーズではありません。
AIは「棚卸しの整理」や「言語化の支援」には使えますが、強みの本質を知っているのは自社の人間です。特に以下の情報は、社内でしか得られません。
- 入社した社員が「入社の決め手」として挙げたもの
- 退職面談で「ここが良かった」と言われたこと
- 競合他社との採用競争で勝った/負けた理由
- 現場のエンジニアが「うちの技術の面白さ」として語ること
これらを収集し、4カテゴリに整理して「強みデータベース」を作る。これがメッセージ設計の土台になります。
ステップ2:候補者ペルソナとの接続設計
強みの棚卸しができたら、次は**「どの強みを、どの候補者に、どう届けるか」の設計**です。ここでNo.1のターゲット設計が活きてきます。
No.1の2軸フレームワークとの接続
前回定義した4象限は、メッセージ設計においても核心的な意味を持ちます。象限によって、伝えるべきメッセージの性質が根本的に異なるからです。
| 象限 | 候補者の状態 | メッセージの目的 |
|---|---|---|
| A | 欲しい × 入りたい | 意思決定を後押しする。スピードと具体性で「今動く理由」を伝える |
| B | 欲しい × 入りたくない | 認知を変える。候補者が知らない自社の魅力を、相手の文脈で語る |
| C | 欲しくない × 入りたい | 関係を維持する。将来の接点を作るコミュニケーション |
| D | 欲しくない × 入りたくない | アプローチ対象外 |
A象限とB象限では、メッセージの根本的な目的が違います。A象限は「すでに興味がある人の背中を押す」。B象限は「興味がない人の認知を変える」。同じスカウト文面で両方をカバーすることは不可能です。
候補者のキャリア文脈を読む
パーソナライズLv.3を実現するには、候補者の「キャリア文脈」を理解する必要があります。キャリア文脈とは、**「この候補者が次のキャリアで何を求めているか」**です。
No.1で定義したDesire軸の評価項目(大項目×重み付け、小項目×配点)は、候補者の「スキル・経験」を構造化するものでした。メッセージ設計では、これに加えて候補者の「動機」を推定します。
| キャリア動機 | シグナル | メッセージで接続すべき強み |
|---|---|---|
| 技術チャレンジ | 技術ブログ執筆、OSS活動、スタック移行経験 | 技術・環境カテゴリの強み |
| 裁量・成長 | スタートアップ経験、短期間での昇進、複数ロール | キャリア・成長カテゴリの強み |
| 安定・ワークライフバランス | 長期在籍、大企業経験 | チーム・カルチャーカテゴリの強み |
| 社会的インパクト | NPO経験、教育・医療ドメイン | 事業・プロダクトカテゴリの強み |
| 報酬・待遇 | 外資経験、年収帯が高い転職パターン | (直接的に伝えるより、面談で提示する方が効果的) |
AIは候補者のプロフィール・経歴からキャリア動機を推定し、「この候補者には、自社のどの強みが最も刺さるか」を自動マッチングします。
接続マトリクス:強み × ペルソナ
強みの棚卸しと候補者のキャリア動機を掛け合わせると、「誰に、何を伝えるか」の接続マトリクスができます。
例えば:
| 候補者タイプ | 刺さる強み | メッセージの軸 |
|---|---|---|
| Go経験3年、スタートアップ志向 | 技術チャレンジ + 裁量 | 「Goでの決済基盤リアーキテクチャを、技術選定からリードできる」 |
| 大企業出身、マネジメント経験あり | チーム + キャリア成長 | 「5名→20名に拡大するチームのマネージャーとして組織設計から携われる」 |
| SRE経験者、技術ブログ執筆 | 技術的チャレンジ | 「100万RPSを支えるインフラの設計・運用に、大きな裁量で挑戦できる」 |
| 営業経験者、スタートアップ転職歴 | 事業成長 + 裁量 | 「シリーズBのトラクションフェーズで、セールス戦略を一から構築できる」 |
このマトリクスは、すべてのスカウトメッセージの設計図になります。候補者が変わればメッセージが変わる。しかし、伝える強みは自社の棚卸しから選ばれるので、ブレない。
メッセージの構造設計:固定ブロック × AI可変ブロック
なぜ「構造」が必要なのか
AIにスカウト文を全文生成させると、2つの問題が起きます。
問題1:自社らしさが消える
AIが生成する文章は無難で均質的になりがちです。どの会社のスカウトも似たようなトーン、似たような構成になる。候補者から見ると「またAIスカウトか」と一瞬で分かってしまう。
問題2:伝えるべきことが抜ける
AIに任せきりにすると、自社が必ず伝えたい情報(給与レンジ、勤務形態、チームの特徴など)が欠落することがあります。逆に、候補者にとって不要な情報が冗長に入ることも。
これらの問題を解決するのが、メッセージの構造化——「固定ブロック」と「AI可変ブロック」の設計です。
固定ブロック:「自社らしさ」を担保する
固定ブロックは、候補者が誰であっても共通して伝える部分です。
固定ブロックに入れるもの:
- 自己紹介(誰が送っているか)
- 会社概要(何をしている会社か)
- ポジションの基本情報(勤務形態・報酬レンジなど)
- クロージング(次のアクションへの導線)
固定ブロックのポイントは、「自社のトーン」を確立することです。カジュアルな語り口なのか、ビジネスライクなのか。会社の「声」がここで決まります。
AI可変ブロック:「この人だから」を伝える
AI可変ブロックは、候補者ごとに内容が変わる部分です。ここがパーソナライズの核心です。
AI可変ブロックに入れるもの:
- なぜあなたに声をかけたのか(候補者の経歴・スキルへの言及)
- この会社で何ができるか(候補者のキャリア動機 × 自社の強みの接続)
- なぜ今なのか(ポジションの背景・タイミングの文脈)
AI可変ブロックの生成に使われるのが、先ほど設計した**「接続マトリクス(強み × ペルソナ)」**です。AIは候補者のプロフィールを読み取り、棚卸しされた自社の強みデータベースから最適な素材を選び、候補者のキャリア文脈に接続するメッセージを生成します。
ブロック構造の設計例
スカウトメッセージの構造
┌──────────────────────────────────┐
│ [固定] 件名 │
├──────────────────────────────────┤
│ [固定] 自己紹介 │
│ はじめまして、〇〇社の△△です。 │
├──────────────────────────────────┤
│ [AI可変] なぜあなたに声をかけたか │
│ 候補者の経歴 × 自社の強みの接続 │
├──────────────────────────────────┤
│ [AI可変] この会社で何ができるか │
│ キャリア動機 × ポジションの魅力 │
├──────────────────────────────────┤
│ [固定] 会社概要・基本情報 │
│ 事業内容、勤務形態、報酬レンジ │
├──────────────────────────────────┤
│ [固定] クロージング │
│ カジュアル面談への導線 │
└──────────────────────────────────┘
この構造により、AIが生成するのは全体の一部だけになります。自社らしさは固定ブロックで担保し、パーソナライズはAI可変ブロックに集中する。結果として、「自社のオリジナリティ」と「一人ひとりへの最適化」を両立できます。
AI可変ブロックの「作り方」もカスタマイズする
さらに重要なのは、AI可変ブロックをどう生成するかのルール自体もカスタマイズできることです。
例えば:
- 「技術チャレンジ型の候補者には、具体的な技術課題を必ず含める」
- 「マネジメント志向の候補者には、チーム規模と裁量範囲を強調する」
- 「候補者のOSS活動に言及する場合は、リポジトリ名まで具体的に触れる」
- 「スカウト文全体を300字以内に収める」
このルール設計により、AIによるワンパターン化を防げます。同じ「AI可変」でも、候補者のキャリア動機によって生成のアプローチが変わる。パーソナライズの「深さ」がここで決まります。
象限別のメッセージ戦略
A象限:スピード × 具体性で「今動く理由」を作る
A象限の候補者は、自社を欲しく、かつ自社に興味がある。メッセージの目的は「背中を押すこと」です。
A象限メッセージの原則:
- 具体的であること:「面白いプロジェクトがあります」ではなく「Q3にローンチ予定の決済マイクロサービスのリアーキテクチャを、テックリードとしてお任せしたい」
- スピードを感じさせること:「ぜひお話ししましょう」ではなく「今週木曜か金曜の18時以降、30分のカジュアル面談はいかがでしょうか」
- 決裁者が直接語ること:採用担当ではなく、CTOやVPoEなど候補者が「この人と一緒に働くのか」とイメージできる人物からの発信
A象限では、メッセージの「質」以上に**「速さ」**が重要です。AIの役割は、候補者がA象限に現れた瞬間にメッセージのドラフトを即座に生成すること。人間は内容を確認・微調整して、すぐに送信する。
B象限:認知を変える「翻訳」メッセージ
B象限は、メッセージ設計が最も重要な象限です。候補者は自社に興味がない。その前提でメッセージを設計する必要があります。
B象限のメッセージで最もやってはいけないのは、自社の強みをそのまま羅列することです。
NG例:「弊社はGoでマイクロサービスを開発しており、フルリモート勤務可能で、成長フェーズにあります」
候補者は自社に興味がないのだから、自社の話を聞きたいとは思っていません。必要なのは、候補者の文脈に自社の強みを「翻訳」することです。
OK例:「山田様が現職で取り組まれているk8sのオペレーター開発は、弊社の決済基盤でも最重要テーマです。現職では1つのサービスに対する運用ですが、弊社では15以上のマイクロサービスにわたるオーケストレーション設計をお任せしたい。技術的な挑戦の幅が大きく広がります」
このメッセージは、候補者の「今やっていること」を起点に、「自社に来るとそれがどう広がるか」を具体的に語っています。候補者が自社を知らなくても、自分のキャリアにとっての価値は理解できる。
B象限メッセージの設計原則:
- 候補者の現在地から始める(自社の話からは始めない)
- 候補者の未来像を描く(自社に来ると何が変わるか)
- 具体的な比較を入れる(現職との違いが分かるように)
- 自社の「唯一性」を一点に絞る(他社にも言えることは書かない)
AIの役割は、候補者のプロフィールからキャリア文脈を読み取り、自社の強みデータベースから最も刺さる一点を選び出し、候補者の言葉で語れるメッセージを生成すること。
B象限の応用:マルチタッチ戦略
B象限の候補者は、1通のスカウトで動くとは限りません。複数のタッチポイントでの関係構築を前提にしたメッセージ設計が重要です。
| タッチ | 目的 | メッセージの内容 |
|---|---|---|
| 1回目 | 認知 | 候補者の経歴への敬意 + 自社の独自価値を1点だけ |
| 2回目 | 興味喚起 | 自社の技術ブログ記事やイベント登壇の共有 |
| 3回目 | 行動促進 | 具体的な面談提案(「30分、オンラインで」) |
各タッチポイントで伝える内容が変わるため、メッセージの「シーケンス設計」もAIが管理します。1回目で何を伝えたか、候補者の反応はどうだったかを踏まえて、2回目のメッセージを生成する。
C象限:「今ではない」を前提にしたコミュニケーション
C象限の候補者には、スカウトメッセージというよりもナーチャリングコンテンツが適しています。
- 自社の技術ブログの新着記事を案内する
- 社内勉強会やミートアップへの招待
- 「ポジションが開いたらお声がけします」という将来の約束
メッセージ設計というよりはコンテンツ設計の領域ですが、AI可変ブロックの考え方は同じ。候補者の関心領域に合ったコンテンツを選んで届ける、というパーソナライズが可能です。
「パーソナライズ風」と本物のパーソナライズの違い
改めて、2つの違いを整理します。
| パーソナライズ風 | 本物のパーソナライズ | |
|---|---|---|
| 起点 | 候補者のスキル・経歴 | 候補者のキャリア文脈(動機・志向) |
| 伝える内容 | 「あなたの経歴を見ました」 | 「あなたのキャリアにとって、自社はこう価値がある」 |
| 自社の強みの扱い | 汎用的に羅列 | 候補者の文脈に合った1点を深く |
| AIの使い方 | 名前と経歴を差し込む | 強みDB × ペルソナ推定 → 接続メッセージ生成 |
| 結果 | 「またAIスカウトか」 | 「この会社、ちゃんと自分のことを見ている」 |
本物のパーソナライズが成立する条件は3つ:
- 自社の強みが構造化されている(棚卸しが済んでいる)
- 候補者のキャリア文脈をAIが推定できる(No.1のDesire軸 + Attraction軸)
- メッセージの構造が設計されている(固定 × AI可変のブロック設計)
この3つが揃って初めて、AIは「候補者の心を動かすメッセージ」を生成できます。どれか1つでも欠けていれば、Lv.1の「パーソナライズ風」にしかなりません。
実践:メッセージ設計を始める5ステップ
Step 1:自社の強みを4カテゴリで棚卸しする
事業・プロダクト、技術・環境、チーム・カルチャー、キャリア・成長の4カテゴリで、自社の強みを具体的に書き出す。
- 各カテゴリ最低3つ以上
- 「他社にも言えるか?」のフィルターを通す
- 入社者の入社理由・退職者のポジティブフィードバックを参考にする
- 現場のエンジニア・マネージャーにもヒアリングする
Step 2:強みを「候補者の言葉」に翻訳する
棚卸しした強みを、候補者のキャリア動機ごとに「刺さる表現」に翻訳する。
- 技術チャレンジ志向の候補者向け:「100万RPSを捌く決済基盤の設計をリードできる」
- 裁量志向の候補者向け:「技術選定からアーキテクチャ設計まで、エンジニア主導で進められる」
- 安定志向の候補者向け:「創業3年で黒字化。堅実な経営基盤の上で、中長期的に技術を磨ける」
同じ強みでも、候補者の動機によって伝え方が変わる。この翻訳テーブルが接続マトリクスになります。
Step 3:メッセージのブロック構造を設計する
固定ブロックとAI可変ブロックを定義する。
- 固定ブロック:自己紹介、会社概要、基本条件、クロージング
- AI可変ブロック:「なぜあなたに」「この会社で何ができるか」
- 全体の文字数上限を設定する(300〜500字が目安)
- トーン&マナーを定義する(カジュアル/ビジネスライク)
Step 4:象限別のメッセージテンプレートを作る
4象限それぞれのメッセージ方針を定義する。
- A象限:具体性 + スピード。決裁者からの直接メッセージ
- B象限:候補者起点の翻訳メッセージ。マルチタッチも設計
- C象限:ナーチャリングコンテンツの配信設計
- D象限:対象外
Step 5:送信→フィードバック→改善サイクルを回す
運用を開始し、データで精度を改善する。
- 2週間ごとに返信率を象限別・動機タイプ別に分析
- 「返信が来たメッセージ」と「来なかったメッセージ」の差分を特定
- 強みDBの更新、接続マトリクスの見直し
- AI可変ブロックの生成ルールの調整
よくある失敗パターン
失敗1:強みの棚卸しをせずにAIに書かせる
AIへの入力が「求人票の情報だけ」だと、どの会社でも言えるスカウト文しか出てこない。自社の独自価値が入力されていなければ、AIはそれを出力できない。
→ 対策:メッセージ設計の前に、必ず自社の強みの棚卸しを行う。
失敗2:全象限に同じメッセージを送る
A象限の候補者にもB象限の候補者にも同じテンプレートを使う。A象限は反応するかもしれないが、B象限はスルーされる。
→ 対策:象限別のメッセージテンプレートを必ず分ける。
失敗3:「パーソナライズ = 名前を入れる」と思っている
候補者の名前と経歴に言及するだけで「パーソナライズしている」と満足してしまう。Lv.1のパーソナライズに留まっている。
→ 対策:パーソナライズの3レベルを意識し、Lv.3を目指す。
失敗4:AIの出力を確認せずに送信する
AIに全文生成させてそのまま一括送信。不自然な表現、事実と異なる内容、候補者への配慮不足が混入するリスクがある。
→ 対策:AI生成後の「確認・編集」ステップを必ず入れる。このプロセスがフィードバック学習の入力にもなる。
まとめ:メッセージ設計は「自社の強み × 候補者の文脈」の構造化
メッセージ設計の本質は、文面のクオリティではなく、「何を届けるか」の構造設計です。
| 要素 | 内容 | AIの役割 |
|---|---|---|
| 自社の強みの棚卸し | 4カテゴリで具体的に整理、「自社にしか言えない」を特定 | 言語化支援・整理 |
| 候補者ペルソナとの接続 | キャリア動機を推定し、刺さる強みを自動マッチング | 動機推定・接続マトリクス生成 |
| メッセージ構造 | 固定ブロック × AI可変ブロックで自社らしさとパーソナライズを両立 | 可変ブロックの自動生成 |
| 象限別戦略 | A:背中を押す B:認知を変える C:関係を維持 | 象限判定・テンプレート切替 |
| フィードバック学習 | 返信率・編集データから接続マトリクスを継続改善 | パターン学習・ルール最適化 |
ターゲット設計(No.1)で「誰に」を定義し、メッセージ設計(No.2)で「何を」を設計する。この2つが揃うことで、初めてスカウトは「量の作業」から「質の戦略」に変わります。
まずは自社の強みを棚卸しする。そして、候補者一人ひとりの文脈に合わせて、AIで翻訳する。
アプローチ設計シリーズの次回は、**No.3「チャネル設計——どこで届けるか」**を解説します。ターゲットとメッセージが決まったとき、それをどのプラットフォーム・どの媒体で届けるのが最も効果的か。チャネル選定の最適化をAIでどう実現するかを掘り下げます。
TasonalのAIスカウト機能は、このメッセージ構造設計を実装しています。スカウト文をブロック構造で設計し、固定テンプレート × AI可変パーツで自社のオリジナリティを担保しながら候補者ごとに最適化。さらにAI可変パーツの「作り方」自体もカスタマイズ可能なので、AIスカウトにありがちなワンパターンさを回避できます。
