人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方です。
従来の人材戦略が人材を「資源」や「コスト」と見なしていたのに対し、人的資本経営では人材への投資を重視し、積極的な人材育成や環境整備を行います。
人的資本経営が求められる背景
人的資本経営が求められる背景は、急速に変化する現代社会の要請を反映しています。
産業構造の変化
デジタル化や脱炭素化により、イノベーションの重要性が増し、人材の質が企業の競争力を左右する要素となっています。
非財務情報への注目
ESG投資の拡大に伴い、企業の持続可能性に関する情報開示が求められるようになりました。人的資本は重要な非財務情報の一つです。
働き方の多様化
個人のキャリア観の変化や人生100年時代の到来により、柔軟な人材戦略が必要になっています。
少子高齢化
労働人口減少に伴い、多様な人材の活用と個々の能力を最大限に引き出す経営が重要になっています。
グローバル化
国際的な競争力を維持・向上させるため、人材への戦略的な投資が不可欠になっています。
海外と日本の開示規定
海外の動向
- EU:2014年より「非財務及び多様性情報の開示に関する改正指令(NFRD)」が運用されています。
- 米国:SECが人的資本に関する情報開示を義務付けています。
日本の動向
- 2023年3月期決算以降、上場企業に対して有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務付けられました。
- 内閣官房の「人的資本可視化指針」では、7分野19項目に関する開示が推奨されています。
- 「人材版伊藤レポート」の発表により「人的資本経営」の意義や変革の方向性、人材戦略などが示されました。
開示のポイント
- 経営戦略との連動:人的資本への投資が企業価値向上にどうつながるかを説明する。
- データの活用:客観的な指標に基づく意思決定と情報開示を行う。
- 独自性と比較可能性のバランス:自社の特徴を示しつつ、他社との比較も可能な情報を提供する。
- 継続的な改善:定期的に情報を更新し、取り組みの進捗を示す。
人的資本経営は、企業の持続的成長と社会的価値の創出を両立させる重要な経営アプローチとして、今後さらに注目されていくでしょう。