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2026.2.25採用

人事1人で回す中小企業の採用戦略|100〜300名企業の「ひとり人事」が採用を仕組み化する方法

採用人事
人事1人で回す中小企業の採用戦略|100〜300名企業の「ひとり人事」が採用を仕組み化する方法

はじめに——「ひとり人事」の採用は、なぜ回らないのか

従業員100〜300名の企業。成長フェーズに入り、採用ニーズは急拡大している。しかし、採用担当は1人。もしくは人事・労務と兼務。

この「ひとり人事」の状態で、世の中の採用戦略の記事を読んでも、ほとんどが実行不可能に感じるのではないでしょうか。

  • 「採用ブランディングを強化しましょう」→ その余裕がない
  • 「データでPDCAを回しましょう」→ データを整理する時間がない
  • 「候補者体験を設計しましょう」→ 目の前の日程調整で手がいっぱい
  • 「専任のリクルーターを配置しましょう」→ その人件費がない

問題は、努力やスキルではなく「構造」にあります

1人の人間が「戦略立案・媒体運用・スカウト・書類選考・日程調整・面接・内定後フォロー・ATS管理・社内調整」をすべて担うという構造自体が、破綻しているのです。

本記事では、この「ひとり人事」の構造的な課題を整理し、大きなチームや予算がなくても「仕組み」で採用を回すための実践的なフレームワークを提示します。


「ひとり人事」が破綻する構造的理由

まず、なぜ「ひとり人事」が回らないのか、その構造を明確にします。

採用業務の4つの役割

採用活動には、本来異なる4つの役割が必要です。

役割 主な業務 求められる能力 大手企業での担当
ストラテジスト 採用計画、チャネル設計、KPI管理 事業理解、分析力 採用マネージャー
リクルーター スカウト、候補者との対話、動機付け コミュニケーション、共感力 専任リクルーター
コーディネーター 日程調整、ATS管理、候補者対応 正確性、スピード 採用アシスタント
エバリュエーター 書類選考、面接評価、合否判断 評価力、判断力 採用担当+現場マネージャー

大手企業ではこれらを分業できますが、「ひとり人事」は、4つの役割をすべて兼務しているのです。

キャパシティの構造的不足

典型的な「ひとり人事」の時間配分を見てみましょう。

役割 本来必要な時間 実際に取れる時間 ギャップ
ストラテジスト 月20時間 月5時間 -75%
リクルーター 月30時間 月15時間 -50%
コーディネーター 月30時間 月50時間 +67%(過剰)
エバリュエーター 月30時間 月25時間 -17%
合計 110時間 95時間

浮かび上がる構造:

  • コーディネーション業務(日程調整・ATS管理・候補者対応)が全時間の50%以上を占拠
  • その結果、戦略立案の時間が75%不足
  • 候補者との対話やスカウトにかける時間も半分

つまり、最も重要な業務(戦略・候補者との対話)が最も圧迫され、最も付加価値の低い業務(コーディネーション)が時間を食いつぶしているのです。

この構造を放置したまま「もっと頑張ろう」とするのは、構造的に無理があります。必要なのは、努力ではなく設計です。


「ひとり人事」の採用設計フレームワーク——「手放す・仕組み化する・集中する」

限られたリソースで採用を回すために、業務を3つのレイヤーに分類し、それぞれに適切な打ち手を当てます。

3レイヤーフレームワーク

レイヤー 原則 対象業務 打ち手
Layer 1: 手放す 判断不要な定型作業を人の手から切り離す 日程調整、ATS入力、候補者への定型連絡 AIツール・自動化
Layer 2: 仕組み化する 属人的になりがちな業務に構造を与える 書類選考、スカウト、評価基準 基準の構造化・AI支援
Layer 3: 集中する 人にしかできない高付加価値業務に時間を使う 面接、採用戦略、現場との合意形成 時間を確保する

このフレームワークのポイントは、Layer 1と2を実行することで、自然とLayer 3の時間が生まれるという点です。「戦略の時間を作れ」と言われても作れないのは、Layer 1と2が放置されているからです。


Layer 1:手放す——判断不要な業務を自動化する

まず取り組むべきは、「自分がやらなくても結果が変わらない業務」の特定と自動化です。

自動化すべき業務の判定基準

判定基準 自動化すべき 人がやるべき
判断の有無 判断不要(手順通りにやれば終わる) 文脈やニュアンスを踏まえた判断が必要
繰り返し頻度 高頻度で繰り返す 都度異なる対応が必要
失敗のインパクト 失敗してもリカバリー可能 失敗の修復が困難

具体的な自動化ポイント

日程調整(削減インパクト:最大)

「ひとり人事」の時間を最も食っているのが日程調整です。候補者から希望日をもらい、面接官の空きを確認し、候補枠を提示し、カレンダー登録し、リマインドを送る。これが候補者ごとに発生します。

Before: 1件あたり20〜30分 × 月20件 = 月10時間
After(AI日程調整): 確認・承認のみ = 月1時間

空いた枠の単純なマッチングだけでなく、面接官の負荷や候補者の希望を踏まえた「決まりやすい枠」を提案できるツールを選ぶのがポイントです。また、空きがないときに面接官に直接打診して枠を創出する機能があれば、「面接官を追いかける」工数からも解放されます。

候補者への定型連絡

応募受付、書類選考結果、面接日程の案内、リマインド——これらはテンプレート化と自動送信で対応できます。重要なのは、定型連絡のスピードを上げることが候補者体験の向上に直結するという点です。「応募したのに3日間音沙汰」という状態は、担当者が忙しいからではなく、仕組みがないから発生しているのです。


Layer 2:仕組み化する——属人的な業務に構造を与える

Layer 2は、「ひとり人事」が最も苦労する領域です。書類選考やスカウトは「判断」を含むため完全な自動化はできませんが、構造を与えることで品質を安定させ、工数を大幅に減らせます

書類選考の仕組み化

「ひとり人事」の書類選考で最も危険なのは、評価基準のドリフトです。一人で選考していると、評価のブレに気づく人がいません。「先週はOKだったのに今週はNG」という判断の揺れが、本人も気づかないまま継続します。

対策:評価項目の構造化

ステップ 具体的なアクション 所要時間(初回)
1. Must/Want/NGの定義 各ポジションの必須・歓迎・NG要件を現場マネージャーと合意 2時間/ポジション
2. 重み付けの設定 各項目にウェイトを数値で設定 30分/ポジション
3. チェックリスト化 書類選考時に確認する項目をリスト化 1時間/ポジション

初回は設定に時間がかかりますが、一度作れば選考のたびに使えます。しかも、構造化された基準があれば、AIスコアリングを活用して書類選考の工数を大幅に削減できます。AIがスコアと要点を整理し、人が最終判断を下す。これなら一人でも評価の一貫性を保てます。

スカウトの仕組み化

100〜300名の企業は知名度が高くないため、待っていても応募は来ません。ダイレクトリクルーティング(DR)は必須ですが、スカウトの質と量を両立させるのは一人では困難です。

スカウトを仕組み化する3ステップ:

  1. 評価軸の構造化: 「なんとなく良さそう」ではなく、Must/Want/NGで候補者を評価。優先順位が明確になる
  2. メッセージの構造化: 「固定テンプレート(会社紹介・ポジション説明)× AI可変パート(候補者ごとの個別訴求)」の二層構造で、質を保ちながら量も確保
  3. フィードバックサイクル: 返信率・編集率を追跡し、メッセージを継続改善

重要なのは、スカウトの「量を最大化」することではなく、「有効応募率」を最大化することです。リソースが限られる「ひとり人事」だからこそ、量より質で勝負する設計が必要です。


Layer 3:集中する——「ひとり人事」が本当に時間を使うべき業務

Layer 1と2で生まれた時間を、「人にしかできない業務」に集中させます。

「ひとり人事」が集中すべき3つの領域

1. 採用マネージャーとの合意形成

100〜300名の企業では、採用の意思決定者は経営者や事業部長です。「どんな人を採りたいのか」を構造的に引き出し、合意することが、採用の成否を分けます。

この合意形成がないまま採用を進めると、書類選考を通した候補者が面接で落とされる、という往復が発生します。これは工数のムダであり、候補者体験も損ないます。

2. 候補者との直接対話

面接、カジュアル面談、オファー面談——これらは人にしかできない業務です。特に100〜300名の企業では、「人事担当者が直接話してくれた」という体験が、候補者の入社意欲に直結します。

大手企業と違い、「ひとり人事」は全候補者と接点を持てる立場にあります。これは弱みではなく、小さな組織ならではの強みです。ただし、その時間を確保できなければ強みは活かせません。

3. 採用戦略の振り返りと改善

「どのチャネルから、どんな候補者が来て、どこで落ちているのか」。この振り返りができないと、同じ問題が繰り返されます。月に2時間でも良いので、「今月の採用はどうだったか」をデータで振り返る時間を確保することが、長期的な採用力の差になります。


「ひとり人事」の採用ロードマップ——3ヶ月の実行計画

上記のフレームワークを、実際に3ヶ月で実行するロードマップです。

Month 1:土台を作る

アクション 所要時間 期待効果
1週目 現状の業務時間を計測・可視化 3時間 ボトルネックの特定
2週目 日程調整ツールを導入・設定 5時間 日程調整工数の80%削減
3週目 主要ポジションの評価基準を構造化 4時間 書類選考の基準策定
4週目 候補者対応のテンプレート化 3時間 定型連絡の自動化

Month 2:仕組みを回す

アクション 所要時間 期待効果
1・2週目 構造化した基準で書類選考を運用 通常業務内 選考スピード向上、判断の一貫性確保
3週目 スカウトのメッセージ構造を設計 4時間 テンプレート×可変パートの二層構造完成
4週目 Month 1の効果を測定・振り返り 2時間 改善ポイントの特定

Month 3:改善サイクルを確立

アクション 所要時間 期待効果
1・2週目 スカウトの返信率を分析、メッセージ改善 3時間 スカウト品質の向上
3週目 採用チャネル別CPAを計算・比較 2時間 チャネル配分の最適化
4週目 月次振り返りのテンプレートを確立 2時間 継続改善の仕組みが定着

3ヶ月後の姿:

指標 Before After 変化
コーディネーション業務の時間 月50時間 月15時間 -70%
戦略・振り返りの時間 月5時間 月15時間 +200%
候補者対応の平均レスポンス 2〜3日 当日〜翌日 大幅改善
書類選考の評価基準 属人的 構造化済み 再現可能

「人を増やす」以外の選択肢

「採用が回らないなら人を増やせばいい」という解は、中小企業には現実的でない場合が多いです。そこで、人を増やさずにキャパシティを拡張する選択肢を整理します。

選択肢 月額コスト カバー範囲 適している状況
AI採用ツール 0〜15万円 日程調整・書類選考・スカウトの各プロセス 仕組み作りは自分でできるが、工数を減らしたい
採用代行(RPO) 成果報酬型なら固定0円 媒体運用〜ATS管理まで一括 採用ボリュームが一時的に急増、またはノウハウが不足
採用担当の増員 30〜50万円 全業務 採用が恒常的に5ポジション以上

考え方のポイント:

採用担当をもう1名雇うコスト(月30〜50万円)と比較して、AIツールやRPOがどの程度のキャパシティをカバーできるかを考えましょう。

例えば、日程調整・書類選考・スカウトをカバーするAIツールの統合プランが月7万円であれば、採用担当者を雇う場合の5分の1以下のコストで、コーディネーション業務の大部分をカバーできます。

また、採用ボリュームが一時的に急増する場合(新規事業の立ち上げ、退職の連鎖等)は、成果報酬型のRPOを一時的に活用するのが合理的です。固定費0円のRPOなら、採用できなかった場合のコストリスクはありません。


「ひとり人事」が陥りがちな罠とその回避策

最後に、「ひとり人事」が特に陥りやすい罠と、その回避策を整理します。

なぜ陥るのか 回避策
「全部自分でやらなきゃ」罠 他に担当がいない責任感から Layer 1の業務は「自分がやる必要がない」と割り切る
「ツールを入れれば解決」罠 ツール導入が目的化 ツールは手段。まず「何を自動化するか」を決めてから選ぶ
「AIに丸投げ」罠 忙しさから全自動化を求める 判断は人がする設計を崩さない。AIは判断材料を揃える役割
「完璧にしてから始める」罠 一度に全部を変えようとする まず日程調整だけ自動化する、など小さく始める
「データがないから改善できない」罠 完璧なデータ基盤を求める まず「チャネル別応募数」だけでも追跡を始める

まとめ——「ひとり人事」の採用は「設計」で変わる

「ひとり人事」の採用が回らないのは、担当者の能力の問題ではなく、構造の問題です。

  1. 採用業務には4つの役割がある: それを一人で全部担うのは構造的に無理がある
  2. 「手放す・仕組み化する・集中する」で3層に分ける: 全部を同じ熱量でやらない
  3. まずLayer 1(自動化)から始める: 日程調整の自動化だけで、月数十時間が浮く
  4. 浮いた時間をLayer 3に投資する: 戦略・候補者対話・振り返りに時間を使う
  5. 小さく始めて、仕組みとして定着させる: 完璧を目指さず、1つずつ

「もっと頑張ろう」ではなく、「仕組みを変えよう」。その視点が、「ひとり人事」の採用を変える第一歩です。


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